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福岡家庭裁判所直方支部 昭和49年(家)23号 審判

申立人 町田和夫(仮名) 昭三三・一〇・一〇生

外一名

主文

申立人らが母の氏「町田」を称することを許可する。

理由

一  本件申立書添付の福岡地方裁判所直方支部昭和四八年(タ)第六号認知請求事件の判決書謄本によると同判決が確定した事実は次のとおりである。

1  申立人らの母町田とし子は昭和二四年一一月一一日村上良一と婚姻し二児をもうけていたが、昭和三一年一二月二八日頃良一が家出し行方不明となつたので途方にくれていたところ勤先で知り合つた阿部勝と内縁関係を結ぶにいたり昭和三三年一〇月一〇日中立人和夫が、昭和三四年一一月一四日申立人由美子が生まれた。

2  とし子は村上良一の行方が判らなかつたため、離婚の手続が出来ず、為に阿部勝とも婚姻が出来ないので申立人らの出生届出をしていなかつた。

3  しかしてとし子は村上良一の行方を探しあてたので、協議のうえ昭和四三年七月二六日離婚した。

4  その当時同棲していた阿部勝の生活態度が悪かつたので別れ話も出ていたため、婚姻届を出さないままになつていた。

5  ところが阿部は昭和四八年七月二三日屋根葺工事作業中転落死亡した。

6  そこで申立人らは亡阿部勝の子であることの認知を請求して出訴し、これに勝訴した。

二  右判決は昭和四九年一月一二日確定したが、申立人らは本件のような場合その母が前記判決書謄本を添え非嫡出子出生届を提出しても出生当時の母の戸籍である本籍福岡県○○郡○○町大字△△番地筆頭者村上良一の戸籍に入籍させられることになるが、これを直接母の現在の戸籍に入籍できるよう本申立に及ぶというものである。

三  処で、離婚復籍した母から婚姻中の非嫡出生子につき認知判決書を添付のうえ、非嫡出子出生届がなされても、その子は離婚後の戸籍には入籍されず、離婚前の父子関係のない戸籍に入籍される取扱いであるところ、本件のような場合、子の氏の変更を認めて直接離婚後の母の戸籍に(いわば中間省略により)入籍させても身分法上の真実主義に反しないは勿論、戸籍法上も何らの不都合が生じないから、右取扱いを認めて、子の氏を母の氏に変更する申立を認め、しかる後、母から出生届に「母の氏を称する入籍届出」と付記して非嫡出子出生届を認めるのが相当である。よつて本件申立を理由あるものと認め主文のとおり審判する。

(家事審判官 葛原忠知)

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